最高裁判所第二小法廷 昭和44年(オ)330号 判決 1969年8月29日
上告人
金沢保
外一名
代理人
田宮敏元
被上告人
日産車体工機株式会社
外一名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人ら代理人田宮敏元の上告理由について。
被上告人嶋田と訴外宮城孟信とはいずれも土地の転売を業とする者で、本件第一の土地につき同被上告人と同訴外人間になされた売買は、営利を目的とした商人間の売買であることは、原審の適法に認定判断したところである。
ところで、商人間の売買において、当事者の意思表示により一定の日時または一定の期間内に履行をなさなければ、契約をなした目的を達することができないときは、その売買は確定期売買と解すべきところ、被上告人嶋田が昭和三〇年二月九日宮城孟信に対し一、七二六坪の土地を売却するについては、特飲街をつくるという特殊な事情があり、そのため相場より相当安く売却したわけであるから、同被上告人としては、土地分譲を業としているかぎり、何時までも安価な土地の提供にしばられることは不本意不合理であるとの立場から、宮城孟信の立場も考慮して昭和三〇年三月一〇日までに代金全額の支払いがあることに特別の関心を示したものであり、宮城孟信もこのことを了解のうえ、同日までに代金を支払うことを約束したことは、原審の適法に確定した事実である。したがつて、右売買をもつて当事者の意思表示によつて、同日までに宮城孟信が代金を支払わなければ契約の目的を達することができない確定期売買であるとした原審の判断は相当である。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同二について。
確定期売買においては、当事者の一方が履行をしないで、その時期を経過したときには、該売買契約は解除されたものとみなされるのであり(商法五二五条)、その不履行が債務者の責に帰すべき事由に基づくか否か、すなわち履行遅滞の有無に関せず、所定時期の経過という客観的事実によつて売買契約は解除されたとみなされるのである。したがつて、この場合、所論の同時履行の抗弁権が問題になる余地はないと解すべきである。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同三について。
所論の点についての原判決の説示および判断には、所論の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 色川幸太郎 村上朝一)